リポート

【神奈川県選手権/準決勝評】天神町がイニング10点で大勝

【神奈川県選手権/準決勝評】天神町がイニン...

2023.09.26

 最終日の準決勝2試合の勝者は、8月26日開幕の横浜銀行カップ(県大会)出場権も得る。第1試合は5回を終えて3対3と競った内容となり、第2試合は打者13人で10得点という超ビッグイニングが生まれた。 ※記録は編集部 (写真&文=大久保克哉) 3位/戸塚ACFホークス(戸塚区) ■準決勝1 吉 沢 001204=7 戸 塚 00030 X=3 【吉】大村、吉岡、宮原-芭蕉 【戸】鈴木、齋藤、穂満-濱田 本塁打/伊藤(吉) 3回に先制した吉沢は4回に宮原が2ランスクイズバントを決めて3対0に  2回までは両先発が、走者を追いながらも粘投で互いに無失点。試合は中盤から大きく動いた。  3回表、吉沢は四番・猪俣伊吹が左前打に二盗と敵失で三進すると、続く平川圭が中前にゴロを転がして先制する。さらに4回表には、一死二、三塁から二番・宮原瑞樹が2ランスクイズを決めて3対0とリードする。  対する戸塚は4回裏、四番・齋藤壮馬から七番・小川一輝(5年)まで4連続長短打で試合を振り出しに戻す。 4回裏、戸塚の4連打で3対3に。写真上から齋藤の中前打、鈴木の適時二塁打、河内(5年)の左適時打、小川(5年)の中前適時打  イーブンペースを打ち破ったのは吉沢の5年生、九番・右翼の伊藤新だった。まずは5回裏の守りだ。一死二、三塁のピンチで、戸塚の五番・鈴木蒼真主将が打ち上げた飛球を捕球すると、本塁へダイレクトの好返球。間一髪で三走を憤死させる併殺で相手の勝ち越しを阻むと、直後の6回表に先頭打者として大仕事。「打ったボールは真ん中。快心の当たりでした」と振り返る、左越えのランニングホームランを放った。 5回裏、一死二、三塁からの右飛を捕った伊藤(5年)が本塁へダイレクト送球(上)。タッチアップしていた三走・杉浦晃斗が憤死(下)  これで勢いに乗った吉沢は、宮原と三番の5年生・小谷心優の連打や敵失などで7対3と突き放す。そしてケガから復帰してきたという宮原が6回裏二死から久々に登板し、三塁ゴロで締めて決勝進出を決めた。 6回表、吉沢は5年生の小谷(上)が右へタイムリー。五番・平川(下)は3回の先制打に続くダメ押し打 ●戸塚ACFホークス・鈴木蒼真主将「負けていてもみんなで声を出して盛り上げたり、士気が上がるのがチームの良さです。決勝も同点までは追いつくことができたし、この大会は逆転勝ちも多くて、みんなで笑ってできたのが一番良かったなと思います」   3位/明神台リトルグランパース(保土ヶ谷区) ■準決勝2 天神町 1010=11 明神台 000=0...

【都知事杯/決勝評】四つの好勝負。レッドが二冠、日本一へ青信号!?

【都知事杯/決勝評】四つの好勝負。レッドが...

2023.07.21

 第46回都知事杯フィールドフォース・トーナメントは7月17日、レッドサンズの初優勝で幕を閉じた。同じく全日本学童大会出場を決めている、不動パイレーツとの"全国前哨戦”ともなった決勝は、最後まで目が離せない好勝負だった。 ※記録は編集部  (写真&文=大久保克哉) ⇧【初優勝/レッドサンズ】全日本学童大会には3年連続4回目の出場となる ⇩【準優勝/不動パイレーツ】全日本学童大会には2年ぶり4回目の出場となる ■決勝 不 動 000400=4 レッド 10004 ×=5 【不】阿部、永井-小原 【レ】北川、増田、藤森一-増田、竹森、増田 本塁打/藤森一(レ)、小原(不)、難波(不) 出場63チームのファイナル  ちょうど1カ月前の6月17日。両チームは全日本学童東京予選(上位3チームが全国出場)の決勝で相対し、6対4で勝利したレッドサンズが大会2連覇を達成している(※レポートは→こちら)。  都知事杯の、またも決勝で対峙した両チームは、前回を大きく上回る熱戦を展開した。戦力も手の内も知る者同士の、さながら“全国前哨戦”。序盤は双方に併殺プレーが1つずつ。後半に逆転、また逆転と、最後までともに譲らなかった戦いは、勝者にも敗者にも多くの収穫をもたらしたことだろう。 1回表にレッドがスクイズを阻んで併殺を奪えば(上)、2回裏は不動が無死一塁からの内野安打に5-3-5-4の転送で併殺を奪い返す(下)  1回表、守るレッドサンズが一死満塁からのスクイズを阻んで併殺(投直から三塁転送)を奪えば、不動も2回裏の守りでやり返す。無死一塁からの三塁内野安打で、三進を狙った一走を5-3-5の転送で刺し、その間に二進を狙った打者走者も5-4の転送でアウトに。  どちらの併殺プレーも、両監督は攻めを振り返って「ミス」と口にしたが、守る野手陣が次の次の展開までを描けていたからこその重殺でもあった。投直とさせたスクイズバントも、ウエストに近い高めのボールを投じたレッドの先発・北川瑞季のファインプレーではなかったか。不動の先発・阿部成真も、ダイナミックなフォームから緩急を使った投球で決定打を許さなかった。 1回裏にレッドの二番・藤森一が、2試合連発となる先制ソロを逆方向へ(上)。5回表には不動の三番・小原がやはり2試合連発となる中越えの同点ソロ(下)  攻めてはともに、まずは打つべき人が打った。レッドは二番の藤森一生が1回に、不動は三番の小原快斗が4回に、それぞれ2試合連続となるランニング本塁打で1点ずつ。そして試合が大きく動いたのは、その小原の同点弾からだった。「みんなで心を一つにして、良い雰囲気で得点できたと思います」と、永井大貴主将が振り返った4回表。1対1とした不動はなお、五番・阿部から西槙越、難波壱(5年)の3連続長短打で一気に4対1と、勝ち越してみせた。 「藤森(一生)クンを想定して速いストレートに強い子を並べました」と、不動の永井丈史監督。相手の絶対的エースの登板は5回からで、得点こそ奪えなかったが村上陽音が最初にクリーンヒットし、6回には難波が三塁打を放った。 4回表、1対1に追いついた不動はなお、阿部の三塁打(上)に西槙の中前打(下)で勝ち越しに成功(下) 「以前はミスして沈んだまま、ゲームを壊しちゃうようなこともありましたけど、今は落ち着いて次のチャンスを狙って、しっかりと待てるようになりました」  レッドは門田憲治監督がこう評したように、一気に逆転されてもドタバタしなかった。5回表のピンチをエースが力でねじ伏せるとその裏、一番・藤森輝の右前打から反攻に転じる。そして四番の大熊一煕(5年)から宮野歩大、竹森康喜の3連打に敵失も誘って5対4とひっくり返し、そのまま逃げ切ってみせた。 レッドは5回裏二死一、二塁から宮野の中前打(上)で1点、続く竹森は痛烈な左前打(下)で敵失も誘って生還し、5対4と大逆転 「次のカズキ(藤森一)に回すことを考えました」(藤森輝)、「次にコウキ(竹森)がいるので、何でもいいから塁に出てつなごうと」(宮野)、「ここで打たないと負けると思いましたし、気持ちで打ちましたね。オレが決めたかった!」(竹森)...

【都知事杯/準決勝評】全国を見据えた2チームがそろい踏み

【都知事杯/準決勝評】全国を見据えた2チー...

2023.07.20

 第46回都知事杯フィールドフォース・トーナメントは7月16日、準決勝2試合を上柚木公園野球場で行った。1カ月前に閉幕した全日本学童東京予選で優勝したレッドサンズと、準優勝の不動パイレーツが、この日はそろって完勝。8月5日開幕の全日本学童大会を見据えた、新たな布陣や選手起用がズバリと当たる形となった。 ※記録は編集部  (写真&文=大久保克哉) 【3位/高島エイト】徳島県で開催の阿波おどりカップに出場する   ■準決勝1 高 島 10100=2 レッド 10602x=9 【高】重安、鈴木真、吉永-甲斐 【レ】北川、藤森一-増田 本塁打/藤森一(レ)、大熊(レ) 起用にこたえた5年生  レッドサンズは1カ月前に全日本学童東京予選で2連覇。その決勝戦は不出場だった5年生が、この日はスタメンの四番・二塁に。「全国に向けて、6年生に気合いを入れ直してもらおうかな、ということで」と門田憲治監督は試合後に意図を明かした。  大抜擢された中田静は、右打席から実力の高さを証明してみせた。第1打席は痛烈な遊直、5回の第3打席は中前へクリーンヒットを放った。そしてさらなる存在感を示したのが、同じく5年生の大熊一煕(いちき)だった。  3回表から中堅の守備に入ると、その裏の打席で左越え2ラン。さらに5回には右翼手の頭上へ、コールド勝ちを決めるタイムリーを放ってみせた。「絶対にランナーを返してやろうという気持ちでバッターボックスに入ったのが良かったと思います」 1回表、高島は(写真上から)石井、甲斐、吉永の3連打に鈴木真の二ゴロで先制する  結果は5回、7点差コールド。確かに3回裏からはレッドのワンサイドに近かった。しかし、鮮やかな先制パンチを披露し、3回表まで主導権を握っていたのは前年度優勝の高島エイトのほうだった。  1回表、先頭の石井晴仁から甲斐雄大主将、そして三番・吉永章洋までの3連打から、鈴木真夏の二ゴロで先制。その裏にすぐに追いつかれたが、3回表には救援したレッドのエース左腕から勝ち越し点をもぎ取る。最速121㎞/hを誇るレッドの藤森一生は簡単に二死を奪うも、高島は五番・田中駿一郎の右前打と続く仲里皇紀の左越え二塁打で2対1と再びリード。  しかし、その裏にレッド打線が倍以上にやり返した。まずは藤森一が右翼線への逆転2ランで自らの失点を帳消しに。バッテリーミスなどでイニング3点目を失った高島は、投手を含む4人の守備変更も流れを変えられず、与四球や適時失策、被弾も絡んで一気に6点を失ってしまった。 3回裏、レッドは二番・藤森一が右翼線へ糸を引くような打球の逆転2ラン(上)。途中出場の5年生・大熊も左越え2ラン(下)など一気に7対2とした  5回表は内野安打2本と野選で高島が再び、無死満塁の好機をつくるも、ギアを上げたレッドのエース左腕が後続を断つ。6回表には4-6-3の併殺も決めたレッドがその裏、2点を加えて7点差となって勝負は決した。 ●高島エイト・甲斐大樹監督代行「3回の守りで続けてミスが出てしまいました。それまではガマンできていただけに…」   ―Pickup Hero― 独自打法で好左腕から2本...

【全日本学童茨城大会/決勝戦評】手堅く、執拗に!茎崎が10度目全国へ

【全日本学童茨城大会/決勝戦評】手堅く、執...

2023.07.04

 第43回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント茨城県予選兼令和5年度全国・関東ブロックスポーツ少年団軟式野球交流大会茨城県大会は6月24日、ノーブルホームスタジアム水戸の軟式球場で決勝と3位決定戦を行い閉幕。2年ぶり10回目優勝の茎崎ファイターズ(土浦市)が全日本学童出場を決めたほか、準優勝の上辺見ファイターズ(古河市)はスポ少の関東予選へ、3位の水戸市野球スポーツ少年団は関東学童への出場がそれぞれ決まった。思わぬ大差となった決勝から、チームの横顔にも迫った。 ※記録は編集部 (写真&文=大久保克哉)    ⇧優勝・茎崎ファイターズ=2年ぶり10回目の全日本学童へ ⇩準優勝・上辺見ファイターズ=全国スポ少交流関東予選へ ■決勝 茎 崎 15057=18 上辺見 00060=6 【茎】佐藤映、石塚、中根-藤城 【上】鹿倉、小岩、大曾根、中澤、大曾根-櫻井 本塁打/中澤(上) 「力がなくても」  2017年には吉田慶剛主将(千葉・専大松戸高3年)を擁して全日本学童4強入り。そして19年には同大会準Vと、日本一に肉薄した年の「関東の雄」茎崎には、絶対的な大黒柱がいた。  今年の6年生6人は粒ぞろいの中で、エースで四番の中根裕貴が頭ひとつ抜けている。昨秋の新人戦で関東準V、年が明けてローカル大会も制してきた。それでも吉田祐司監督は「決して力のあるチームじゃない。でもそれを言い訳にしない」と繰り返してきた。そんな指揮官が、夏の全国出場を掛けた大一番ではエースではなく、5年生の佐藤映斗を先発のマウンドに送った。 茎崎は5年生・佐藤映(上)が先発して相手の強打を巧みにかわし、4回途中から救援のエース・中根(下)が冷静な投球で胴上げ投手に 「(対戦相手の)上辺見は打撃が良いチームなので、やられるとしたら一方的に打ち込まれる展開。のらりくらりとした佐藤映のピッチングのほうが、うまくかわせるんじゃないかな、と」  吉田監督の読みはズバリと当たった。2回戦から準決勝まで2ケタ得点中の上辺見打線を、5年生左腕が3回まで無得点に。いずれも三塁に走者を置いたものの、あと1本を許さない。また、重圧のかかる場面でこそ堅くなる守備は、いかにも茎崎だった。 「監督から『ストライクだけ入れて、あとは何も考えずに後ろの守りに任せろ』と言われていて、だんだん調子も上がってきて楽しく投げられました」(佐藤映) 1回表、三番・藤城の左越え三塁打(写真)に五番・藤塚の左前打で茎崎が先制  全国初出場に王手をかけていた上辺見は、機先を制されて波に乗れなかったのかもしれない。1回表に二死無走者から2安打されて先制点を献上。2回表には無死満塁から3-2の本塁封殺で一死は奪ったものの、以降は不運な当たりや茎崎の徹底したバント攻撃に崩されて5失点、早くも0対6に。  このワンサイドになっても、茎崎の攻撃は手堅くて執拗だった。3四球3得点の八番・渋澤律斗が「後ろにつなぐこととムダにアウトにならないことを心掛けています」と語ったように、どの打者もボール球には決して手を出さなかった。  一塁に出れば、ほぼ確実に二盗とバントで好機を広げる。そして4回には藤塚凌大の2ランスクイズと新岡蓮の3点三塁打で5得点。11対6と5点差に詰められた直後の5回表は、2安打ながら敵失に乗じた足技と小技で大量7点を奪って再び大きく突き放した。 2回には三走・渋澤が暴投で生還(上)、4回には2ランスクイズ(下=打者・藤塚、三走・佐藤遥主将)など、茎崎は機動力と小技も駆使してリードを広げていった 「個性を大事に」 「ウチとすれば打って点差を広げないと勝てないと思っていたけど、あれだけ守りがバタバタしちゃうとね…。茎崎の足とバント攻めは想定内。でも、取れるアウトを取れなかったのはベンチの声掛けを含めて指導者の責任です」...

【全日本学童東京大会/3位決定戦評】秋の関東王者、船橋が夢舞台へ滑り込み

【全日本学童東京大会/3位決定戦評】秋の関...

2023.07.03

 高円宮賜杯第43回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント東京都予選大会の3位決定戦は6月17日、府中市民球場で決勝に先駆けて行われた。一進一退の前半戦を経て、後半に大きく突き放した船橋フェニックス(世田谷区)が、花小金井サイドワインダーズ(小平市)に13対6で勝利。開催地・東京の3枠目での全国大会初出場を決めた。 ※記録は編集部、決勝戦リポートは→こちら (写真&文=大久保克哉)   ⇧全日本学童初出場を決めた3位・船橋フェニックス ⇩4位・花小金井サイドワインダーズ  ■3位決定戦 船 橋 31234=13 花小金 01203=6 【船】原、皆見、原-齋藤 【花】佐野、西村、吾郷-吾郷、山中 本塁打/原(船) 4/1051のプライド   1週間前のダブルヘッダー。準々決勝に続く準決勝で敗れた同士が、残り一枚の全国切符をかけて対峙した。  終わってみれば、3者凡退は1回裏のみ。ほとんど塁上を賑わし続けた戦いは、既定の90分を5イニングで消化。昨秋の関東王者・船橋が毎回得点で貫録を示した形となったが、前半戦は一進一退の好勝負が展開された。 ⇧5回表、船橋の三番・原が中越え3ラン。左手を突き上げての生還で12点目が入る 3回表、船橋の五番・齋藤蒼太が左前へ(上)、七番・楠健伸が右前へ(下)それぞれタイムリー 「自分たちは良い球を投げられていたけど、相手が強くて打たれてしまいました」と、花小金井の吾郷裕真主将。正捕手として投手陣を懸命にリードし、5回表には自ら救援も、船橋打線の勢いを止められず。それでも、東京1051チームのベスト4まで来たのだ。 「相手に先行されても、みんなで力を合わせて後半勝負の戦いも経験してますし、今日もまだぜんぜん、いけるぞと思いながら戦っていました」  花小金井は主将の言葉を裏付けるような、光るプレーや粘りも随所に見られた。10点差とされた直後の5回裏には、上位打線が3安打集中で3得点。2回表の守りでは5年生の右翼手・大嶋甲人がファウルフライをダイブで好捕。「ファウルは捕れなくてもファウル。打球が飛んだ瞬間に飛び込むと決めていました」(大嶋)。 2回表に美技を披露した花小金井の大嶋(中央)。「これから自分たち5年生の大会もあるので、今日の経験を活かしたいです」  直後の2回裏の攻撃では、先頭の四番・西村風輝が118㎞/hの速球をはじき返しての中越え三塁打。3回にも左翼線へ二塁打の西村は「打つほうは練習の成果が出せたのかなと思います。でも相手のレベルが1つ2つ上かなというくらい、ぜんぜん違いました」と唇をかんだ。  吾郷主将も実力差は認めつつ、「今日で自分たちも1個上のレベルに上がれたと思います。ガスワンカップ(関東大会)とか、まだ目指す大会があるので頑張ります」と殊勝に話した。 120km/hに迫る速球も打ち返して3打数3安打2打点。花小金井の四番・西村が気を吐いた  さて、夏の全国大会へ滑り込みで出場を決めた船橋だ。相手も脱帽させる攻撃力はすさまじかった。  1回表、先頭・尾花緋肢(あかし)の技あり左前打を皮切りに、打つわ打つわでトータル13安打で13得点。三番・原悠翔(※「2023注目戦士」→こちら)の3ランなど派手な一打もありつつ、11盗塁(うち三盗3)に象徴される果敢で抜け目のない走塁が効いていた。3回に二盗を阻まれて以降も走者はトライを続け、相手のミスも誘発。また、走者の好スタートを見た打者は必ず見送るなど、約束事の浸透度もはっきりとうかがえた。...

【全日本学童東京大会/決勝戦評】見えた!昨夏8強越え。レッドサンズV2

【全日本学童東京大会/決勝戦評】見えた!昨...

2023.06.27

 高円宮賜杯第43回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント東京都予選大会は6月17日、府中市民球場で決勝と3位決定戦を行い、レッドサンズ(文京区)の連覇で閉幕した。不動パイレーツ(目黒区)の猛追をかわしきった決勝戦をレポートする。 ※記録は編集部、3位決定戦レポートは近日公開予定 (写真&文=大久保克哉) ⇧優勝・レッドサンズ=3年連続4回目の全日本学童へ ⇩準優勝・不動パイレーツ=2年ぶり4回目の全日本学童へ   ■決勝 不 動 000004=4 レッド 10203 X=6 【不】永井、阿部-阿部、永井 【レ】藤森一、増田、藤森一、増田-増田、竹森 本塁打/増田(レ) ワンサイドが一転  北海道に次ぐ全国2番目の登録数。1051チームの頂点にはやはり、一筋縄で輝けるものではなかった。  6対0と完勝ペースで迎えた最終6回表の守り。レッドはエース左腕の藤森一生を再びマウンドへ。先発して4回まで42球で3安打無失点のエースは、5回の守りから右翼に就いていた。既定の70球まで28球もある。最速120㎞/hもたびたびマークするなど、前半戦の力投ぶりからすれば、そのまま胴上げ投手になる絵も十分に浮かんだ。 「胴上げ投手」は3度目の全国にお預けとなったレッド・藤森一だが、初回から飛ばして最速120km。4回まで無失点、無四球の被安打3という快投だった 「やっぱり野球は最後まで何があるかわからないし、簡単に終わらせてくれないのが不動さん。全国大会に向けて良い経験になりました」(藤森一※「2023注目戦士」の記事は→こちら)  世代屈指とも言える左腕を脱帽させた不動打線は最終回、しぶとさを披露した。「今日はチームで速いボールを打つ練習をしてから会場に来たので、初球からどんどん振って合わせていこうと思っていました」。 三番・小原快斗は右越え三塁打を含む3打数3安打、狙い通り初球からスイングして右に左に打ち分けた。 6点を追う6回表に不動が猛反撃。四球と難波の左前打(上)で一死一、三塁から、三番・小原が3打席連続安打となる左前適時打(中央)。五番・岸も適時内野安打(下)など集中4安打で4点を返した  一番からの好打順で始まった6回表。不動は岩崎貴彦がまず四球を選ぶと、難波壱(5年)と小原快斗の連打で1点。四番・永井大貴主将の特大中飛で一死一、三塁となり、岸樹吹の内野安打で2点目が入る。続く西槙越の左前打で満塁として、相手エースを降板させると、阿部成真の押し出し四球で3対6に。さらに、八番・村上陽音のゴロを遊撃手がファンブルして4点目が入る。だが、ここで守るレッドサンズにビッグプレーが飛び出した。  ボールを拾い直した遊撃手の小笠原快が、一塁ではなく、三塁ベースに入った齊藤碧人へ送球。これでオーバーランしていた走者をタッチアウトにしたのだ。「一つ(一塁)はもう無理だなと感じて。いつもショートをやっている竹森君(康喜、このプレー時は捕手)が、そういうときによく三塁に投げているのでマネしてみました」(小笠原)。「ああいう場面でも諦めてプレーを止めずに、三塁ベースに入るというのは練習通りです」(齊藤)  この2アウト目で、守るレッドの一塁側応援席も盛り上がった。そして2点差の二死一、二塁から、打球はまたも遊前に転がり、6-5の封殺でゲームセットとなった。 6回表、レッドは一死満塁のピンチに遊撃手の小笠原がゴロを捕り損ねる(4失点目)も、球を拾い直した小笠原は三塁送球で走者を憤死に。直後も遊ゴロから6-5封殺で試合終了(写真)  前年に続いてチームを東京王者に導いたレッド・門田憲治監督は、真っ先に最後のビッグプレーを称えた。「いつもあんなことができるわけではないんですけど、成長を感じましたね。エラーはプロ野球選手もするし、ミスとかエラーの後にどうするかがすごく大事だ、と教えてきましたので」。  5回までの盤石な試合運びは、全国8強入りした昨夏を超える予感をさせるものだった。1回に先制、3回に中押し、5回にダメ押しと効果的に加点。6得点のうち敵失絡みは1点のみで、あとは適時打と犠打で奪ったものだった。3回に2ラン、5回にスクイズを決めた四番・増田球太は「ホームランの打球は僕としては完璧。エースの一生(藤森)を助けるためにここで1本と思って」と笑顔で振りれば、エースの藤森一は「今年は自分がチームを引っ張って優勝まで導きたいです」と自身3度目の全国大会へ抱負を語った。...

【都知事杯開幕】46回の伝統大会に63チーム参加

【都知事杯開幕】46回の伝統大会に63チーム参加

2023.06.18

 第46回東京都学童軟式野球大会フィールドフォーストーナメントの開会式が6月17日、スリーボンドスタジアム八王子であった。翌18日に始まる巨大トーナメントに出場する地区代表63チームが入場行進。選手を代表して開催地・八王子市のみなみ野ファイターズの三宅隆輝主将が宣誓した。→こちら   前年度に5年ぶり2回目の優勝を果たした高島エイトを先頭に、参加全63チームが入場行進。スタンドは保護者や関係者らで埋まった  参加約1600人の選手には、特別協賛のフィールドフォース社から夜間でも練習可能な「LED付シャトル」を贈呈。大会MVPの副賞は同社グラブ工房の「オーダーグラブ券」となる。また、同社のボールパーク足立で野球教室を主宰する千葉スカイセラーズの秋吉亮投手(元日本ハムほか)も特別参加して「お父さんお母さんに感謝の気持ちを大切にしてください」とメッセージを発信し、始球式も行った。 東京・足立区出身の千葉スカイセラーズの秋吉亮投手(元日本ハムほか)も登壇し、学童球児たちを激励した  決勝は7月17日を予定、上位4チームは上部大会の関東学童(8月5日開幕)に進む。今大会は全日本学童都大会の上位3チーム、レッドサンズ(文京区)、不動パイレーツ(目黒区)、船橋フェニックス(世田谷区)も参加。前年度優勝の高島エイト(板橋区)の甲斐雄大主将は、事前の監督主将会議において「自分を含めて去年の経験者も何人かいます。今年も優勝したいです」と抱負を語っている。 開会式を裏方でサポートした地元・八王子の中学軟式野球部員たちにも「LED付シャトル」が贈られた。右はフィールドフォース・吉村尚記社長  

【全日本学童千葉大会決勝】流れ行き来の熱い”守備戦”、八日市場に軍配

【全日本学童千葉大会決勝】流れ行き来の熱い...

2023.06.11

 高円宮賜杯第43回全日本学童軟式野球千葉県予選大会マクドナルド・トーナメントは6月10日、千葉市の中田スポーツセンター野球場で決勝を行い閉幕。八日市場中央スポーツ少年団(匝瑳市)が、10年ぶり2回目の全国出場を期す磯辺シャークス(千葉市)に1対0で勝利し、初めての優勝と全国出場を決めた。昨今の軟式野球の流れと一線を画すような、ロースコアの熱い接戦を特報しよう。 (写真&文/大久保克哉 ※記録は編集部) 【初優勝/八日市場中央スポーツ少年団】全国スポ少交流の県予選も8強まで勝ち進んでいる   【準優勝/磯辺シャークス】2013年以来の全国出場はならずも、6年生は12月の卒団までに関東学童など大きな大会がまだ複数残っている   ■決勝 磯 辺 000000=0 八日市 10000 X=1 【磯】二田、江川、上村、八田-横山 【八】富永、石井-伊藤 百戦錬磨も想定外の快投 『ピンチの後にチャンスあり』との格言も、驚異的な反発力のバット『レガシー』も、千葉のファイナルにおいては存在感をとんと失った。  1回裏、八日市場が宇井貴浩の内野安打と富永孝太郎主将の左前打でたちまち無死一、三塁とし、三番・石井陽向の左犠飛で1点を先取する。このときに内野に中間守備を指示していた磯辺の小池貴昭監督も、そのままスミイチでの決着は想像できなかったようだ。 「準決勝でかなり打ちましたので、今日は逆に振りが大きく粗くなるかなという心配はありましたけど、三塁も踏ませてもらえないとは…」 1回裏無死一、三塁から八日市場の三番・石井が左へ犠飛。ベンチも茫然と見上げる特大のフライだった  双方、無失策で先攻の磯辺が散発の2安打、後攻めの八日市場が3安打。終始、息をのむような「守備戦」が展開され、試合の流れだけが激しく行き来した。  その一因は、1月に練習試合(磯辺が2連勝)をしていたことと、1週間前の準決勝を同じ会場で続けて戦っていたこと。つまり、互いの戦力や手の内をある程度は知った上での決戦だった。 「磯辺さんはバッティングもいいし、小池監督は百戦錬磨。いろんな揺さぶるようなこともされてくるのは想定していました」  八日市場の宇野貴雄監督が警戒したように、磯辺打線は好投手対策を忠実に実行していった。1回表、先頭の横山輔主将が一度もバットを振らず、3球で見逃し三振したのが象徴的だった。後続の打者も、ファーストストライクに決して手を出さない。 70球で6回二死まで被安打2の4奪三振で、無失点に無四球。八日市場のエース・富永孝太郎主将が圧巻の投球でVに貢献 「球数(1人1試合70球まで)を稼いで、2人目のピッチャー勝負と。まあ、その中でも先発ピッチャーも攻略できればなと思っていたんですけど、初球からバンバン、ストライクを取られてしまって粘らせてももらえず…」  小池監督を脱帽させたのは、八日市場の大型右腕・富永主将だった。角度のある速球を主体に淡々とストライクを投げて、粛々とアウトを重ねていく。「緊張しましたけど、練習でしてきたことを発揮するだけ。絶対に勝ってやると思って、球数も気にせず投げました」。60球を過ぎて迎えた6回も投球に変化はなく、8球で二死を奪ってお役ご免に。準決勝では3回で9安打9得点の磯辺打線に、許したクリーンヒットは1本のみで四死球も失点もゼロという、ほぼ完璧な内容だった。 磯辺は四番・植草大地が唯一クリーンヒットの右前打(2回表)。「内を狙っていたけど仕留めきれなくて(左へ痛烈ファウル)、追い込まれてから広く待って対応しました」...

【全日本学童千葉大会/準決勝評/決勝展望】 6・10頂上決戦は八日市場vs.磯辺

【全日本学童千葉大会/準決勝評/決勝展望】...

2023.06.06

 千葉県459チームの代表は、八日市場中央スポーツ少年団(匝瑳市)か、磯辺シャークス(千葉市)か!? 高円宮賜杯第43回全日本学童軟式野球千葉県予選大会マクドナルド・トーナメントは6月4日、千葉市の中田スポーツセンター野球場で準決勝2試合を行い、ファイナリストが決した。6月10日、同球場での決勝を制した王者が8月5日に東京・神宮球場で開幕の全国大会に出場する。準決勝のリポートと決勝の展望をお届けしよう。 ■準決勝1 向 山 01105=7 八日市 1223 X=8 【向】扇、田中-橋本、扇 【八】富永、石井、富永-伊藤 ⇧守り勝った八日市場中央スポーツ少年団は、2大大会を通じて初の全国出場をかけて決勝へ。⇩3位・向山ファイターズは「感謝の気持ちをもって元気よく。采配を含めてフェアプレーで戦うのが一番の特長です」(角野監督)   向山の一番・田中遥馬主将の左越え二塁打に始まった試合は、最後に流れが急変する好勝負となった。  先発した八日市場の本格派右腕・富永孝太郎主将は1回表、いきなり無死三塁という大ピンチから本領を発揮する。「どんどんストライクを取って、打たせたり三振を奪う」とセールスポイントを語るように、後続打者を早々に追い込むと声を発しながらの速球で2人を空振り三振に。また、右翼手の田中功明が前方の低いライナーを好捕して無失点で切り抜けた。  対する向山も、先発の右サイド・扇隼人が巧みな投球で打者に的を絞らせない。だが、バッテリーエラーやカバーリングの遅れなど手痛いミスが重なり、序盤2回までに被安打1で3失点。それでも打線が盛り返していく。2回には橋本一真と金井颯大の連打で1対1とすると、八番・八朔良幸が5球連続ファウルなど速球に食らいつく。3回には二番・浅野高輝が適時二塁打。さらに6点を追う5回表には、八朔の右三塁打を皮切りに四球や四番・渡邊征吾の三塁打などで1点差まで詰め寄る驚異の粘りをみせた。 上げる足の高さや動作テンポを変えたり、上下左右にボールを散らすなどクレバーな投球が光った向山・扇隼人 「ウチはとかく10番(富永)が注目されがちですけど、捕手や三遊間を中心にバックの守りで引き立っている。6年生はもちろん、スタメンの4年生5年生4人がよく頑張りました」  八日市場は宇野貴雄監督がそう振り返ったように、試合を通じて堅守が効いていた。2回にはディレードスチールを捕手・伊藤瑠生が冷静に阻止。3回には一死二塁から強烈な三ゴロを捕った石井陽向が、飛び出している二走を見て挟殺に。そしてハイライトは5回表だ。  抜け目のない走塁と三番・石井の適時三塁打などで6点にまで広げていたリードが、みるみる1点に。だが、ここからビッグブレーが飛び出す。一死一塁から、ゆるく舞い上がった打球は左翼・中堅・遊撃の中間あたりへ落ちていく。これを背走してきた遊撃手の宇井貴浩がギリギリでグラブに収めてみせた。そして最後のアウトは、ヒヤリとするライナーを右翼手の田中がキャッチ。試合は規定の90分を超えており、ここで決着した。 ●向山ファイターズ・角野雅丈監督「最後まであきらめずによく頑張ってくれた選手たちに成長を感じました。序盤のミスによる失点が最後に響いてしまいました。まだスポ少の県大会も、夏の大会もあるので鍛え直してきたいと思います」 ■準決勝2 大和田 044=8 磯 辺 234=9 【大】杉山璃、保坂、糸山-山澤 【磯】二田、上村、八田-横山 本塁打/杉山璃   ⇧磯辺シャークスは「旋風」を起こした2013年以来の全日本学童出場を期して決勝へ。⇩3位・大和田タイガースは昨夏の全国経験者を軸とする全員野球で、2回戦では大会3連覇中の豊上ジュニアーズ(柏市)に3対2で勝利 「お互いにストライクをなかなか取ってもらえない中で、真ん中の甘いボールを良いスイングでとらえた、ということで打ち合いになりましたね」  2013年に全日本学童8強までチームを導いている磯辺・小池貴昭監督が振り返った準決勝の第2試合。両軍で計10四球、双方9安打(編集部記録)に3投手ずつ登板という大乱打戦となり、既定の90分間を3イニングで消化することになった。...

【東京グリーンカップ開幕】3年生に光、3年ぶり開催

【東京グリーンカップ開幕】3年生に光、3年...

2023.05.22

 第2回東京グリーンカップ争奪学童軟式野球3年生大会が5月21日、目黒砧グラウンドで開幕。オープニングゲームの2チーム参加による開会式と、1回戦2試合が行われた。大会はトーナメントで、共催する目黒区少年軟式野球連盟の9チームのほか、8区1市から11チームが参加。決勝は6月25日を予定している。 ルールで禁じるまでもなく  新型コロナウイルスが、季節性のインフルエンザウイルスなどと同じ扱いの5類感染症に移行されて2週間弱。多くがまだ10歳に満たない少年・少女たちの本気のプレーや笑顔が、東京のグラウンドにも戻ってきた。 「グリーンカップ」の始まりは滋賀県。多賀少年野球クラブの辻正人監督が「なかなか日の当たらない3年生にスポットを充ててあげたい」と、2005年から毎年主催。数年前から大人の罵声・怒声を禁じると、スマイルの花が咲くようになって人気も飛び火。大会趣旨に則った「グリーンカップ」が県外の各地に広がりを見せている。 開幕ゲームに挑む2チームが開会式に参加  東京では2020年の2月に初開催も、以降はコロナ禍もあって延期が相次いだ。第2回大会の実現にあたった事務局の深井利彦さん(目黒区少年野球連盟理事長)は、都内でも選手が激減していることを実感したという。 「野球をする子供が本当に減っちゃってますね。われわれの目黒区でも14チームのうち、3年生以下で試合ができるチームが9。区外の友好チームなどにも声を掛けても、『(人数不足で)単独では出られない』という返事がたくさんありました」  ただし、4年生以下の大会は都下でも複数ある中で、3年生以下の大会は希少であり、東京グリーンカップが目標や希望となるケースもあるだろう。また、怒声のない大会は見守る保護者や指導者までも笑顔にしてくれることは、近年のグリーンカップで裏付けられている。 「今の時代に怒声や罵声をなくそうっていうルール自体が、ちょっとおかしいのかなという感じもしますよね。そういうのはないのが当たり前ですから。もちろん、野球のルールやマナーはきちっとした上ですけど、試合を見ている親御さん(保護者)が楽しくなる感じでないと。少年野球は親御さんがいないと成り立たないですからね」(深井さん) ■北原15ー1ジュニア   ジュニアファイターズは1回表、一番・下津成大(上)の内野安打から1点を先取。その裏には右翼手の二村隆介(下)が前進守備からライトゴロを決めてみせた  オープニングゲームは、地元・目黒区のジュニアファイターズが先制し、ベンチも保護者らも大いに盛り上がった。以降は北原少年野球クラブ(練馬区)が攻守で圧倒し、毎回5得点(※5得点で攻守交替)の3回コールドで決着した。 北原少年野球クラブは、監督と選手が4年生から繰り上がる。昨年は6年生を率いた細田健一監督が今年は4年生チームに  3年生以下は基礎練習が8割で、「捕る・投げる」は大人がほぼマンツーマンで教えているという北原の選手たちは、どんなにリードを広げてもストライクは積極的に振り、走者は抜かりなく進塁した。手を抜いたり、相手を侮辱するような言動がまるでなかったのも印象的で、指導歴14年で新年度から4年生以下を受け持つ細田健一監督は、そうした心の育成にも力を注いでいるという。 「たとえ50対0で勝とうが、『北原とまた試合をしたい!試合をしてほしい!』と言われるようなチームになりたいんですね。それを私は言い続けてますし、コーチも保護者も、マナーを含めて大切にやってきています」 北原は先発・堀川怜志(上)が安定した制球でゲームをつくった。3回裏、佐藤滉がイニング5得目となる本塁打(下)を放って試合は終了   ■有馬・トゥ13ー8東山  有馬スワローズ(中央区)・トゥールスジュニア(荒川区)と、東山エイターズ(目黒区)の第2試合は、初回に3点ずつを奪い、2回はともに0点という好ゲームに。4回表に有馬が8点差として勝負を決めたが、その裏、東山も粘り強い攻撃で5点を奪い、13対8で決着した。 友好関係にある、中央区の有馬スワローズ(選手5人)と荒川区のトゥールスジュニア(選手9人)が唯一の合同チームとして参戦(上)。先発の吉井海翔(下)は、真上から投げ下ろすボールに力があった 「バットの芯にボールを当てるだけだから、何も難しくない!」「ベルトのところに来たら振ればいい!」など、具体的な声掛けで緊張気味の選手たちの背中を押していたのは、トゥールスジュニアの大串善則監督だった。 「昔は高学年の監督もやっていたんですけど、シンプルに言ってあげるのが良いと思うんですよね。あとはそれをどう変換していくか、というのが子供たちは楽しいところだと思うので」  振り逃げを知らずに走らなかったり、チーム内の走塁ルールを覚えていなかっいたり。そういう場面でも声を荒げるのではなく、あとから確認したり、コーチ陣で教える姿も印象的だった。ただし、グリーンカップだから、そういうリアクションをしたわけではないという。 「5年前に中学チームの指導から戻ってきてからですね。世代が変わって自分の息子もいなくなった中で、他人様からお子さんを預かる場合に、どうやって言葉で伝えるかということを改めて考え直しまして。言葉遣いもちょっと気をつけているつもりです」(大串監督)  大会は今後も日曜日を中心に試合を消化し、遅くても7月には優勝チームが決まる運び。第1回大会は文京区のレッドサンズが優勝している。...

【千葉県スポ少交流大会】今夏の全国舞台の地で、63チーム熱戦に火ぶた

【千葉県スポ少交流大会】今夏の全国舞台の地...

2023.05.16

 第45回千葉県スポーツ少年団軟式野球交流大会が、5月14日に開幕した。成田市のナスパスタジアムでの開会式には、各地域代表の63チームが参加(3チームは学校行事で公欠)。その後は県内8会場で、巨大トーナメントの1回戦が行われた。決勝は6月10日を予定、優勝チームは全国切符をかけて7月16日、東京で開催される関東大会へ進む。 雨天の場合は中止が決まっていた開会式だが、5月14日の9時から予定通りに行われた(成田市・ナスパスタジアム)  今夏の夢舞台になるからだろうか。どれも予定調和でなく、主催者の真心や熱意も感じられる、印象深い開会式だった。  お決まりのような長時間の入場行進がなく、参加60チームの選手たちは予めフィールドに整列。そして順番に地域とチーム名をアナウンスされると、先頭の選手がプラカードを高く掲げていく。空はぶ厚い雲に覆われ、直射日光と高い気温を免れたこともあるが、式中に卒倒や体調不良者が出なかったのは、こんな第一声による集中が働いたせいもあるだろう。 「みなさん、元気ですか?!」  千葉県スポーツ少年団の大平仁部長が開式通告で問い掛けると、フィールドの選手たちが口々に「はい!」と答えた。以降も、地元・成田市の小泉一成市長の挨拶や露木循審判委員長の諸注意に対して、選手たちは声に出しての返事で応じる。そのたびに、保護者らで埋まった内野スタンドがにわかに沸いた。 内野は土、外野は天然芝で内野席があるナスパスタジアムは、高校野球の千葉大会やプロ野球の二軍戦も開催される。今夏の全国スポ少交流大会の会場にもなる予定 「今年の夏の全国交流大会は初めて、ここ千葉県で開催されます。この県大会の優勝チームは8チームが参加する東京での関東大会に進み、最後の2チームまで勝ち残ると全国大会に出場です。ぜひ、そこを目指してください」と、大平部長。  また、露木審判委員長は「この大会は交流大会であり、覇権大会ではありません。勝ち負けはありますが、相手への思いやりや野球ができることの感謝も忘れずに、お願いします」と念を押した。 昨年の全国スポ少交流(奈良県開催)に出場した大和田タイガース(八千代市)。昨年からメンバーの6年生、杉山璃空(左)と杉山燎(右)は2年連続出場を期している  学童軟式野球の夢舞台、夏の全国大会は2つある。全国スポーツ少年団軟式野球交流大会(日本スポーツ協会主催)は、全日本学童大会マクドナルド・トーナメント(全軟連主催)より2年早い1979年に始まり、コロナ禍で中止の2020年と21年を含めて第45回を迎える。現在は全国9ブロックの持ち回りで開催されており、関東ブロックが開催地となるのは2005年の栃木県以来18年ぶりで、千葉県は初。 「交流大会」とあるように参加16チームで優勝を決するトーナメント戦以外に、開催地のチームとの交流試合や野球教室などもある。また、4日間の大会期間中は全チームが同宿で、オリエンテーションなどでも親睦を深める。昨年は新型コロナウイルスの感染疑い(発熱)が出るなどして交流戦はすべて中止となり、1チームは準々決勝を前に棄権。団員14人(登録選手)と監督、引率責任者らの交通費と宿泊代が免除されるのも大きな特徴だ。  今夏の開催期間は8月3日から6日で、成田市営大谷津球場がメイン会場になる予定。なお、従来は2枠ある「開催地代表チーム」の決し方は検討中だという。 ナスパスタジアムでのオープニングゲーム、長生ファイターズ対向山ファイターズに先駆けて、県スポーツ少年団の平良清忠副本部長による始球式  

【ピックアップ/柏市春季大会より】4大会連続で全国へ。豊上ジュニアーズの現在地

【ピックアップ/柏市春季大会より】4大会連...

2023.04.29

 豊上ジュニアーズと言えば、今や千葉県や関東の枠も超えた全国区の強豪だ。夏の全日本学童大会は3大会連続出場中で銅メダルが2個。今年も目指すは日本一だが、従来と様相がやや異なる。昨年までの髙野範哉監督は3年生チームを指揮(インタビューを後日UP予定)。前年度の5年生チームから繰り上がった原口守監督の下、大目標へまずは最初の予選をクリアしたチームの横顔に迫った。 ※市決勝戦の内容は→こちら 紅一点の杉浦茜音も五番・一塁で頼れる戦力。6年生12人で全国の頂へ進軍する  近年の豊上ジュニアーズは、学年ごとにチーム編成ができるほどの大所帯となってきている。今年のトップチーム(A)は6年生12人だけで、5年生以下は帯同していない。原口監督は12人を前年度も率いており、豊上のBチームとして大会にも参加してきたとあって、目に見えない貯金がある。 昨秋は関東4強  昨年秋の新人戦は千葉大会を制して関東4強まで進出した。これが自信にもなったが、それ以上に悔しさが募ったという。関東大会では優勝することになる東京の船橋フェニックスと準決勝で対戦し、3対6で敗れている。 「あの負けを子供たちも僕自身も忘れていませんし、悔しさを忘れない、ということを合言葉にして、もう一度チーム一丸となって底上げしてきているような感じです」(原口監督)  秋の県王者とはいえ、今夏の全国大会の予選に優遇措置はない。柏市大会に続いて千葉大会で優勝して初めて、全国の扉が開かれる。まずは柏市22チームの頂点に立ち、5月末からの県大会出場を決めた時点で、指揮官は手ごたえや今後の見通しについて「五分五分ですね」と繰り返した。 春の柏市大会全4試合に先発した左腕・金田一毅(上)は打たせて取る。丸山凌生(下)はダイナミックなフォームからの速球が持ち味。ともに制球力に長ける  昨年は強打で鳴るチームだった。全国大会でも3試合連続の2ケタ安打で8強入り。今年は趣が大きく異なるという。「バッテリーを中心に粘り強く守るというのが、チームの強みかなと思っています。そこを活かしながら、ココというときの打の1本と集中力ですね」(同監督)。  市の大会では4試合のうち3試合が2ケタ得点の大勝。決勝も終わってみれば2ケタ安打の10得点で4回コールドと、圧勝だった。それでいて、慢心の欠片も見えないのは志の高さゆえだろう。  決勝も守っては無失策、2イニングずつ投げた2投手はそろって無四球だった。大会を通じて先発を任されてきた左腕・金田一毅は立ち上がりで一死三塁のピンチを招くも、後続を打ち取って無失点。救援した丸山凌生は3安打で1点を失ったが、内野陣が落ち着いた転送で2失点目を食い止めてみせた。 青柳翔大(上)は右へ左へ長打を放つ。前野魁(下)はパンチ力に加え、三塁守備でも魅せる 信頼と絆の深さ 「今年はスーパーな子はいませんけど、全員が中の上という感じですかね」  こう評する指揮官は昨秋の関東大会以降、できるだけメンバーの12人全員を使いながら戦ってきたという。この柏市大会では、主将で正捕手の髙根史葉の故障(軽度)など予期せぬアクシデントもあったが、代わりにマスクを被った滑川彩太が穴を埋めてお釣りがくるほどの安定したプレーを披露した。 「僕は本当はレフトで、キャッチャーの経験はちょっとだけですけど、思い切りやりたいタイプなので、緊張とかしないでやれました」  そんな滑川が打線では四番。決勝の3打席は今年のチームを象徴するような内容だった。まずは初回にセンターの頭上を越える先制の2点三塁打。そしてリードを広げる中で迎えた以降の2打席も、ボール球を強引に打つような私欲に走らず四球を選んだ。「甘い球は捕らえて、ボール球はいかない。次につなぐ、チームのために、という感じで打席に入っています」。 身体能力も光る三番・遊撃の坂本康太はマウンドにも立つ。攻守のカギを握る一人だ  一方、ブルペン捕手など、献身的に動いていた髙根主将も欠場は良薬にもなったようだ。「誰にも負けたくないし、負けてないと思いますけど、試合に出られない人の気持ちも分かりましたし、ベンチにいる間は仲間をサポートすることだけを考えていました。チームは全員野球で1点でも多く取れるように練習しているので、これからの大会でも成果を出していきたいと思います」。  投手は計算が立つのが4枚。攻めては今や豊上の代名詞とも言える、無死または一死三塁からのゴロ・ゴーという戦術も磨いている。市の大会では失敗もあり、成功もあり。原口監督は精度にまだまだ満足していない様子だ。 「県大会では相手も当然、対策をしてくるでしょうし、その中でどう確率を上げていくか。もちろん、戦術はゴロ・ゴーだけではありませんし、今までは練習という意味も含めてサインを出していた面もありましたけど、県大会からは違います」 全国最終予選を前に「自分もプレッシャーがないと言ったらウソになる」と原口守監督。選手12人との前年度からの蓄積と堅固な信頼関係が拠り所だろう  一律の「中の上」の12人が、「上」への階段を上がっている。その足音は指揮官にも響いているのだろうか。そこは定かでないが、12人の思いは確実に届いているようだった。市の大会4連覇の表彰式に続く記念撮影時、遠目に立って集団に加わろうとしない指揮官を、12人は声をやさしく合わせて招き入れた。 「ハ~ラグチさん、ハ~ラグチさん!」 (大久保克哉)

【柏市春季大会】 豊上が4連覇で県大会へ

【柏市春季大会】 豊上が4連覇で県大会へ

2023.04.28

 全日本学童の予選も兼ねた、オークスベストフィットネス旗争奪第47回柏市春季大会(千葉県)は4月23日、柏ビレッジで3位決定戦と決勝を行い閉幕した。決勝は全国4大会連続出場を期す豊上ジュニアーズが、増尾レッドスターズを10対1で下して4連覇を達成。準優勝の増尾と3位決定戦を制したビクトリージャガーズは千葉日報杯、4位の松葉ニューセラミックスは近隣3市の東葛大会にそれぞれ出場する。 ■決勝 増 尾 0010=1 豊 上 325×=10 【増】飯塚、小暮、飯塚-幸村 【豊】金田、丸山-滑川   2回裏、リードを4点に広げた豊上はなお、一死三塁からゴロ・ゴー。結果は空振り三振に三走が挟殺されてチェンジに  1回表、増尾は一番・小暮の右中間二塁打に、石黒の犠打で一死三塁と先制のチャンス。豊上は先発の金田が踏ん張り、三振と右飛で切り抜けるとその裏、二番・青柳からの4連続長短打などで2点を先取する。2回裏には青柳の左越え2点二塁打で4対0に。増尾は3回表、豊上の二番手・丸山を攻め立てて二死二、三塁から古市の三塁内野安打で1点を返すも、5-3-2の転送で二走が憤死。その裏、豊上は六番・前野の中越え適時三塁打に続き、七番・坂本歩と一番・矢島にもタイムリーが生まれるなど計10点目。4回表は丸山が3人で斬ってコールドが成立した。 ●増尾レッドスターズ・三浦哲男監督「結果はコールド負けですが、全体的に大きなミスもなく、いつも通りにプレーできたのではないかと思います」     豊上は1回裏、四番・滑川彩太が中越えの三塁打で2点を先取(上)、二番・青柳翔大は2回に2打席連続となる二塁打(下)       増尾は大敗も、捕手・幸村真澄を中心に堅守を披露(上)。2打数2安打と気を吐いた小暮拓真(下)は、救援のマウンドで力強い球を投げていた     ■3位決定戦 ビクト 101013=6 松 葉 010102=5 【ビ】式守、宍倉、竹内、式守-三木 【松】諸星、岡井、諸星-小川原   6回裏、1点差に詰められたビクトリーは二死満塁からの飛球を中堅手・澤田海翔(左)がキャッチして試合終了。「よく捕りました。澤田は確実に守れる子」(曽我監督)...

【特別リポート/多賀グリーンカップ】ストレスフリーで享受する“野球の幸せ”

【特別リポート/多賀グリーンカップ】ストレ...

2023.04.10

 導くコーチ陣も、プレーする選手も、見ている保護者も、部外者すらも笑顔にしてしまう。真剣勝負でありながら、ストレスフリーの幸福度100。“野球の幸せ”をとことん享受、共有する。学童野球のあるべき姿を映し絵しにしたような大会が毎年3月末、滋賀県で開催されていることをご存知だろうか。第19回多賀グリーンカップ争奪学童軟式野球3年生大会の横顔をリポートする。 3年生の大会でも二盗阻止が珍しくはない。育成を放棄しなければ、ここまでできるのだ    野球とはスポーツであり、遊びやレクリエーションではない。学童野球もそこは何ら違わないし、多賀グリーンカップも根本をはき違えてはいない。  32チームによるトーナメント戦を3日間(予備日含む)で消化するという強行軍。主役はまだ10歳にならない3年生たちだが、どの顔も真剣そのもの。おふざけや手を抜いてプレーしている風はないし、二盗阻止(タッチアウト)だって見られるレベルだ。岡山からは予選を経た最強チームがやってきてるし、北の大地からは選抜された選手たちが2チームで参戦。本気ゆえ、負ければ涙もあるが、それ以上に圧倒的に多いのが笑顔。言うなれば「スマイルの花」が、フィールドやベンチの内外で咲き誇っていた。 本塁打も多数。写真上は大会MVP、多賀少年野球クラブ(滋賀)・高井一輝のランニング本塁打。下は志比グランツスター(福井)・阿部朝陽の2回戦での先頭打者アーチ 「衝撃」と言えば大げさかもしれない。だが、初めてこの大会に足を運んだ人の少なからずは、「夢の国」ディズニーランドを初めて訪れたときにも似た、驚きや幸福感を覚えるのだろう。  そしてその非日常的な世界観は、特に大人を虜にするのかもしれない。その証拠に、このグリーンカップに出たい、というチーム同士の連合軍が複数(9チーム)。それも今大会に限ったことではないという。 非日常を求めて  例えば、福井県の松岡少年野球クラブ(2014年全日本学童出場)と、志比グランツスターは吉田郡永平寺町でしのぎを削るライバルだが、「低学年のときくらいは一緒に伸び伸びと楽しくやれれば」(辻岡憲三監督代行)と毎年、合同で参戦。今年は2回戦で志比の阿部朝陽が逆方向へ先頭打者アーチなど、初球ストライクから打ちにいく姿勢が所属チームに関係なく見られた。「バッターボックスは見に行くところじゃなく、打ちにいくところですから」(辻岡代行)  同じく福井県の福井市からやってきた和田レッズと社北ブルーファイヤーズは、毎年1月からこの大会に向けた合同練習を実施。フィールドの選手は雨天下でも攻守にアグレッシブで、それをまた懸命に声で励ますベンチの選手たちも印象的だった。指揮を執った社北の齊藤実コーチは、3回戦で惜敗しても満足そうな笑みでこう振り返った。 「元々は和田さんがウチ(社北)に声を掛けてくれたのが、参加の始まりです。今年も2カ月でチームがまとまってきたところ。打つのが一番なんですけど、子供がどうやって楽しめるか、というのを僕は最優先に考えています」 福井の和田レッズと社北ブルーファイヤーズの連合軍は、大会参加へ合同練習もしてきたとあって指導者、選手、保護者の一体感が際立った  滋賀県の草津市からやってきた笠縫東ベースボールクラブと矢倉ブルースターの連合軍は、1回戦敗退も、今後の4年生大会も連合で参加する可能性があるという。率いた笠縫東の中原亮一監督は、大会主催チームの多賀少年野球クラブ(滋賀)の育成方針に深い感銘を受けている一人だった。 「多賀との交流は一昨年からです。子供に気持ちよく野球をさせる、というのが僕に足りんかったところやと気付かせてくれて、どうやって子供を夢中にさせるのか、多賀の谷(貞郎)コーチから具体的にいろんなことを学びました。草津市は選手がまだ増えてきてないですけど、今は滋賀県のチームはみんな明るいですよ」 指導者の笑顔の理由  4位入賞した山田西リトルウルフ(大阪)の中濱賢明監督は、指導歴14年。全国出場経験もある国内屈指のマンモスチームの中で、4・5年生専任の監督を務めており、グリーンカップでの指揮は2年ぶりだった。 「野球はミスがつきもののスポーツ。エラーもあるし、緊張はしていると思いますけど、公式戦はとにかく子供たちが120%の力を出せるように、ということを一番に心掛けています」  目の前の3年生たちを担当して1カ月弱だが、グリーンカップを経てすっかり打ち解けたことだろう。殊勲打の選手は、WBC王者・侍ジャパンのように塁上で“ペッパーミル”パフォーマンス。ファインプレーの選手らと決まってグー・タッチを交わす指揮官は、2回戦で好救援した主将を真っ向から抱きしめた。試合中の不運なジャッジには一切の反応をせず、エラーした内野手には「何か問題あるか?」とベンチからメガホンで。「ないです!」と答えた選手が直後の3アウト目を奪って戻ってくると、こう言って出迎えた。 「ええか、これが野球なんや!」  言われたほうも言ったほうも、目を見合わせて淀みなく笑い、周囲にも一斉に白い歯がこぼれた。   遠く北海道から参戦した選抜の2チームは、存分に力を発揮して何度も盛り上がった。惜敗後の涙は、本気と思いの強さを物語る  準優勝の一宮ウイングス軟式野球スポーツ少年団は、岡山予選を経てきたとあって、選手の層と個々の能力で抜けていた。でも何より際立ったのは、選手たちのパフォーマンスを引き出す指揮官の破顔一笑と適切な声掛け。それと保護者たちが奏でる応援の歌と声だった。 「決勝戦はウチの応援席の曲や歌に、相手チーム(多賀少年野球クラブ)の選手も応援席も一緒に盛り上がってくれたりして、コロナ禍も落ち着いてきて良かったなと、しみじみ思いました」  こう振り返った久成康博監督は指導歴14年。この年代専任の指揮官で、今大会は2年連続2回目の出場だった。...

【特別リポート】王者・中条ブルーインパルスの現在地

【特別リポート】王者・中条ブルーインパルス...

2023.04.06

 予選参加規模は球界随一。全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは「夢のまた夢の舞台」とも言われる。高校野球の夏の甲子園と同じく、47都道府県の王者が本大会に出場するが、昨夏Vの中条ブルーインパルス(石川)は「前年度優勝枠」で2年連続4回目の出場が決まっている。予選免除は王者の特権だが、必ずしもプラスに作用しないことは過去の歴史が物語る。昨年のVメンバーのうち7人(5、6年生)が残る、中条の近況をお伝えしよう。   中条ブルーインパルス ちゅうじょう 【創立】1984(昭和59)年※1993(平成5)年に改称 【活動拠点】石川県河北郡津幡町 【全日本学童大会出場(成績)】3回=2016年(2回戦)、17年(1回戦)、23年(優勝) 【全国スポ少交流大会出場(成績)】1回=2007年(準優勝) ※大注目の主将の情報は→こちら    ユニフォームの鮮やかなライトブルーが、芝の上でより映える季節を迎えている。昨夏の全国制覇以来、中条ブルーインパルスを取り巻く環境は大きく変わったというが、当人たちの取り組みは何ら変わっていないようである。  試合中のベンチに、大人の怒声や気負ったムードはない。指揮官は選手に確認と助言はするが、いつでも穏やか。守る野手へ「右だ!左だ!もっと下がれよ!」だのと、がなり続けるコーチもいない。バッテリーもいちいちベンチを見ないし、攻撃でも選手は自分たちでサインを出し合いながら、どこまでも勝負強く、またどこまでも楽しそうにプレーをして日本一に輝いた。  昨夏の中条が全国舞台で展開した「選手主体の野球」は、球界に土着した旧態依然へのアンチテーゼ。そしてその成功体験は、これからの学童野球界のひとつの道しるべとなった、と言えるのかもしれない。   5枚いる投手陣の中でも寺岡と2本柱を形成しそうな庭田(写真)。三番打者としての働きも見逃せない 「僕たちはいつも通りの野球をして日本一になったので、これからもいつも通り。何も変わりません」  昨夏のエース兼主将の服部成(星稜中1年)は、石川への凱旋から約1カ月後にそう話していた。秋の公式戦では敗北と涙もあり、12月のポップアスリートカップ全国ファイナルの準決勝(大阪・長曽根ストロングスに敗北)を最後に6年生は引退したが、そのイズムは新チームに引き継がれている。 今年も無欲の勝利を  昨夏もベンチ入りしていた6人の6年生を中心に、選手たちで決めたテーマは『一戦必勝』。前年を踏襲する結果となったが、指導陣が介入したり、保護者やOBらが「日本一!」だの「全国連覇!」だのと、けしかけていないのも中条らしい。昨夏の「胴上げ捕手」で新主将の向井慶士郎が、テーマの意図をこう語る。 「自分たちは上を見過ぎても、あまり力が出ないので。目の前の1試合ずつに集中したほうがいい、ということで」  昨夏の全国決勝のスタメン9人のうち、向ら4人が6年生となって屋台骨を支えている。日常的に大人から過度なストレスを与えられることなく、野球を存分に学んで楽しめているせいもあるのだろう、冬を越した面々は見るからにサイズアップしている。 「基本的に、みんなスイングスピードも去年から10km/hはアップしていますね」と、倉知幸生監督。メディアに登場する機会が増え、訪ねてくるチームも指導者も絶えないが、対外も対内も何ら変わらずに謙虚で奥ゆかしい。選手には最も身近な、人としての模範だろう。   昨年から不動の四番・寺岡。威圧感も増している元気印のポイントゲッターだ  攻守の要は、一番・捕手の向主将だ(※「2023注目戦士」参照)。70mのフェンスオーバーも楽々、爆発的なスピードは走塁でも守備でも際立つ。昨年から不動の四番・寺岡倫太朗は、サイズもパワーも増して右打席から長打を量産する。 「プレッシャーは少しあります。去年の服部先輩のように何でもできて、味方がミスしてもやさしくて頼れる選手になりたいです。個人的には今年も全国優勝して、支えてもらっている人たちに恩返ししたいと思っています」...

【ピックアップ/吉川市近隣大会より】「静」と「動」。対極の監督が手にしたもの

【ピックアップ/吉川市近隣大会より】「静」...

2023.03.28

 目の前の結果でいちいち怒鳴ったりしない。一方の指揮官はあえてベンチを動かず、また一方の指揮官は意図的に前面からナインをリードした。共通していたのは、選手たちのトライする姿勢と子供らしいハツラツとした表情だった。吉川市近隣大会で奇しくも、準決勝で敗退した2チームをピックアップする。 ※試合内容は→こちら 三郷ブレイブナイン  敵捕手の肩や、走者の足の速い遅いはさして問題ではない。とるべきリードから、しかるべきタイミングでスタートすれば、二盗は成功するのだ。スタメンの6人が盗塁を決めた三郷ブレイブナインが、それを証明していた。けん制死も3つあったが、次塁への意欲が萎えることはなかった。 三郷ブレイブの佐藤監督は指導歴20年以上。前身の三郷ブルーエンジェルス時代から、一貫して選手主体の野球を追求する  たとえローカル大会でも、勝つに越したことはない。優勝すれば協賛社からの賞品もグレードが上がる。しかし、彼らはもっと高い志で具体的なテーマをもって大会に臨んでいた。だから、指揮官は手痛いミスにも声を荒げず、苦境でもじっと静観していたのだという。象徴的なのが0対0で迎えた準決勝の4回表だった。  先発の後田蓮が突如として乱れ、この回に大量5点を失って敗れることに。だが、佐藤真次監督がベンチを出てきたのは投手交代を告げるための1度きり。あとは腕組みをしたまま、成り行きを黙って見ていた。 「基本的に監督からはタイムをとらないよ、というのは去年から選手に宣言しています。『権利はキャプテンにあるので、タイムをとって自分らで話し合ってやってください』と」(同監督) 二番手の新5年生・井上は制球難で一人相撲となってしまったが、力強いボールに将来性を感じさせた  昨年は所属する三郷市の公式大会を総なめ。この吉川市近隣大会も4強まで進出した。それらを経験してきた6人が最上級生となった今年は「前年を上回る」という目標を全員で掲げている。だが、4回表の再三のピンチにナインは沈黙。制球に苦しむ新5年生・井上裕太に一息入れてやることもできず、5回にも重い追加点を献上してしまった。  戸惑いや遠慮もあったのかもしれない。戸ヶ崎ビーバーズと三郷ブルーエンジェルスが合同の「三郷ブレイブナイン」となり、活動を始めてまだ2年目。試合後に泣き出した岡崎逞斗主将らに、指揮官は短いミーティングの中で穏やかに言った。 「監督に頼ってばかりでは意味がない。自分たちでやれるようになっていかないと、目標にも届かないよ」  シーズンはまだこれから。試金石の舞台で前年を上回ることはできなかったが、実体験から「教訓」という代償を得たブレイブナインが、いよいよ大きな目標へと向かう。 打者一巡で大量5失点の4回表、佐藤監督は腕組みしたまま、ひと声も発しなかった   吉川ストーム  体も肩も打球の強さも、中学生のような一番・捕手が準決勝の相手にいた。対する吉川ストームは新6年生が4人だけで、スタメンのうち2人は新4年生だった。 吉川ストームは12年前に吉川市近隣大会で優勝。篠田監督の息子も当時はプレーしていたという  それでも一様に萎縮していなかったのは、昨秋の新人戦で吉川市大会を制し、県大会まで経験したからだろうか。就任6年目の篠田充宏監督はこの日限定で、あえて自らのアクションを増したという。 「照準を合わせている春の大会が近いですし、ウチの子たちは元気がないものですから、今日は監督というよりキャプテンという腹づもりで声掛けをしました。『相手のバッテリーは素晴らしい選手だけど、何かあったら次の塁を狙おう!』という話も試合前に」  結果、盗塁企図は0でも、バッテリーミスに乗じて次塁を2つ奪った。全員にそういう果敢な姿勢が見られ、打席では好球必打に徹していた。それが、逆転また逆転の好ゲームを展開した要因だろう。 自らの頭脳的なプレーで若いチームを引っ張った一番・投手兼遊撃の及川楓(左)  実際にやるのは選手たち。ベンチの大人がどんなに旗を振っても、相応の知識と能力が選手になければ、なびくことはない。「ストームが掲げているのは『考える野球』なんです。打者はいかに次につなげて、走者はいかに次の塁を奪うか。そのために細かいことも練習しています。あとは野球ノートを全員が書いていて、学校生活や勉学でも自分たちから考えてやろうよ、と。今日はそれも見えましたので、指導者としてうれしい限りです」(篠田監督)  最後に1点差まで詰め寄るも、再々逆転はならずに敗北。しかし、うつむく選手も激昂する指導者もいるはずがなかった。   「静」と「動」。2人の指揮官が準決勝でとった態度は対極にありながら、未来の明るい扉をそれぞれに開いたような気がする。あるいは、優勝や賞品より重くて尊い何かを手にしたのかもしれない。...

【最終日リポート/吉川市近隣少年野球大会】南川崎が初V、36チームの頂点に

【最終日リポート/吉川市近隣少年野球大会】...

2023.03.28

 埼玉県吉川市と近隣6市1町の36チーム参加による第37回吉川市近隣少年野球大会は3月21日、旭公園球場で準決勝と決勝を行い、南川崎ゴールデンアロー(八潮市)が初優勝した。この大会は全国2度出場の吉川ウイングス、竹内昭彦理事長(大会会長)の提唱で1987年に16チームで始まり、近年は指名打者制を採用。出場チームの選定は各市町で異なるが、春の公式大会を前に切磋琢磨する舞台となっている。 ※関連記事「ピッアップ」は→こちら   ■決勝 南川崎 100224=9 美谷本 010000=1 【南】小川、中泉、佐久間-髙橋 【美】松嶋、相良、赤羽-鶴ヶ崎 本塁打:髙橋(南)   ⇧南川崎の先発・小川紘世は5回途中1失点(自責0)と好投。しなやかでバランスのとれたフォームも際立った ⇧2回裏、一死二、三塁からの遊ゴロで、守る南川崎が6-3-2とつないで2人目の走者をタッチアウトに。捕手・髙橋怜は攻守で優勝に貢献  2つの敵失絡みで開始早々に1点が入ったファイナル。流れを大きく左右したのは2回裏だった。  美谷本ファイターズ(戸田市)が、連続四球と重盗で一死二、三塁と一打逆転のチャンスを迎える。ここで七番・福士雄輔の遊ゴロでまず1点。だが、続いて三塁を蹴った二走を、南川崎ゴールデンアローの守備陣は見逃さなかった。6-3-2の転送による併殺で逆転を阻むと、4回以降に9本の長短打で8得点と打線が爆発。投げては先発の左腕・小川紘世が5回途中1失点の好投、2番手の佐久間幸希も1安打無失点と続いた。   ⇧4回表、南川崎は一死一、二塁から九番・粟島丈助が左へ勝ち越し2点打を放つ ⇧美谷本の相良碧人は3回途中から救援してクリーンアップ3人をシャットアウト。準決勝では抜群のフィールディングやけん制技術も披露   ■準決勝1 美谷本 000520=7 三郷ブ 000210=3 【美】相良、松嶋-鶴ヶ崎 【三】後田蓮、井上、島根-岡崎  両先発がゲームをつくった。三郷ブレイブナイン(三郷市)の後田蓮は打者8人までパーフェクト。9人目に与四球も、けん制死で切り抜ける。美谷本の相良碧人は毎回走者を出しながらも、2回には自らの本塁送球でスクイズを阻むなど3回まで無失点と粘投した。  試合は後半戦で動く。4回表、美谷本は一番・松嶋泰賀主将のバント安打を皮切りに打者一巡で5得点。その裏に失策とバッテリーミスで2点を失うも、5回表には三番・鶴ヶ崎力の2打席連続となる適時打などでダメを押した。 三郷ブの先発・後田蓮は4回にバント安打から崩れたが、打者8人目まで圧巻のパーフェクトピッチ...

【特別リポート】関東北部の激戦区に残る大人たちの“良心”。リーグ戦&レクで親交

【特別リポート】関東北部の激戦区に残る大人...

2023.03.23

 このような地域が広がり、こういう大人やチームが増えてくれば、野球界の未来は明るい。そう確信するようなローカル大会が栃木県の宇都宮市にあった。2月23日と3月4日に開かれた「令和5年春季南部地区学童親善野球大会」(以降、南部大会)。近隣同士の小規模なリーグ戦とあってか、地名さえ冠されない大会ながら、その始まりは18年前の参加選手でも「不明」と言うほど歴史がある。見ている保護者や部外者にも笑顔や共感を呼ぶような風習や仕掛けも、伝統の中で築かれてきたのだろう。 今大会は9チームが3グループに分かれ、2日間で各4試合を消化。初日の結果から2日目はグループを改編し、最終順位を決した  学童野球にオフシーズンなし。春の訪れを待たずとも、全国津々浦々でローカル大会が行われている。都道府県や市区町村の連盟が主催する大小の公式大会から、名門チームや複数の友好チームが主催する親睦大会まで。その目的は、時期や参加チームによってさまざまだ。ともあれ、地域の絆や互いのリスペクトをここまで尊重している大会は、そう多くないだろう。 基本は学区制だが…  往時は60チーム以上、現在でも44チームが割拠する県庁所在地。宇都宮市は関東北部の有数の激戦区だ。南部大会は、市の南部にある10チームが持ち回りで当番校(幹事)となり、春と秋にそれぞれリーグ戦を行っている。  幹事のチームを「当番校」と呼ぶのは、大半のチームが小学校単位で構成されているからで、校名がそのままチーム名に使われていて「城東小」や「簗瀬(やなせ)小」など、チームを校名で呼び合う風習も残る。一方、学区を持たないクラブチーム「宇都宮ドリーム」も参加しているあたりが、堅固な地盤と仲間意識を物語る。 審判を含む運営は当番校に任せきりではなく、異なるユニフォームの大人たちが裏方も率先  一般的に、全国予選で顔を合わせる可能性がある近隣チームとは、公式戦以外ではあまり手合わせをしないのが、学童を含む学生野球の通例だろう。戦力や手の内を知られたくないからだ。しかし、南部大会では、近隣チームを敵視する向きがゼロに近い。それでいて、1981年に全国スポーツ少年団交流大会を制した横川東学童や2021年の全日本学童16強の宝木ファイターズのほか、東ビクトリーズに横川中央学童と全国経験組が4チームもある。前出の宇都宮ドリームは全国出場こそないが、2020年秋に県準Vなど強豪として名が通っている。  それゆえ、競技レベルは総じて高く、全国舞台で見るような逸材もゴロゴロいた。でもそれ以上に際立ったのは、模範たる指導者の多さだった。 全国をうかがう一方で  相手守備のファインプレーに、その場で「ナイスプレー!」と声を挙げたのは簗瀬スポーツの松本裕功監督だった。 「相手を尊重するという文言は大会規定にもありますし、敵も味方もなく、良いプレーは良いプレーなので」  こう語る指揮官の称賛の声と同時に、ベンチ内から拍手も自然に起こっていた。簗瀬は昨秋に市準優勝で県大会も経験しており、「今年は全国大会に行けるように頑張っています」(松本監督)。三番・捕手の半田蒼真主将を筆頭に、攻守ともハイレベル。投手陣は出色の左腕・郡司啓ら5枚が常時、スタンバイする。打者一巡の猛攻やサヨナラ劇も見せた南部大会は3位に終わるも、春の公式大会直前とあって勝敗より優先した課題があり、貴重な経験を積めたという。 昨秋に市準Vの簗瀬スポーツは、今夏の全国をうかがう。潜在能力と打力の高さに加え、指導陣が模範となるフェアプレー精神も出色だ(写真提供/簗瀬スポーツ)  昨秋の市王者・宇都宮ドリームも2勝2敗で中位に終わるも、就任18年目の菊地政紀監督は収穫ありの様子だった。 「新年度は6年生が7人で全員がピッチャーをやります。みんな去年から試合に出ていて、ある程度できあがったチームなので、南部大会は冬場の成果の確認と、選手主体を試しました。監督が強制するだけの野球では、宇都宮や県を獲れません。選手が自分たちだけで得点したり、ピンチをしのげるようにならないと」  選手の居住地がバラバラのため、チーム練習は土日祝日のみ。平日は各家庭から自主練の動画が監督へ送られ、監督からはコメントが返ってくる。こういう取り組みもすべて、今夏に勝つためであることをチームの全員が理解しているという。 粘りや成長を促す監督  瑞穂野ベースボールクラブは、瑞穂野南小と瑞穂台小でそれぞれ活動していたチームが合併して6年前に誕生。今大会は堅守と粘り強さに、それを引き出す指揮官のアプローチが光っていた。  例えば、二塁手のトンネルから一死二塁のピンチを招くも、続く犠打で一気に生還を狙った二走を1-3-2の転送でタッチアウトに。そして無失点で切り抜けると、指揮官はミスした二塁手を含む選手全員にベンチ前で捕球姿勢をとらせて、ゴロへの対処をレクチャー。就任5年目になる吉田祥明監督は、意図して主将のような立ち位置にいるようだった。 「自分自身も1年目より2年目、2年目より3年目と、向上心を持ってやってきています。中でも選手への伝え方は一番気をつけています。もちろん、厳しく言うときもありますけど、必ずフォローします。子供にとっても親にとっても良いチームになりたいですね」(同監督)  今大会で初めてライトゴロを決めたり、苦しい場面で飛球をランニングキャッチした右翼手はその都度、指揮官からグータッチで出迎えられて満面の笑み。その後、意欲と自信をさらに増しているという。 豊岡Jスターズに吸収される形の合併からまだ2週間の南原鬼怒川(ともに日光市)。渡辺監督は「自分をアピールできている子から使っていく」と選手に明言して臨んだ(写真提供/豊岡Jスターズ)  南部大会の参加1枠は、地域外から招く伝統もあり、今春は日光市の強豪・南部鬼怒川が招かれた。実は部員不足から同市の強豪・豊岡Jスターズに吸収される形となり、始動からまだ2週間弱。それでも2勝1敗1分の4位に食い込み、渡辺修一監督はこう総括した。 「まだ試行錯誤ですが、良い経験ができました。合併して試合に出られなくなる選手も出てきて、危機感が相乗効果を生んでいると思います。宇都宮の強豪校と対等にやれましたし、市内では絶対に負けないと思うので、県で勝ちたいですね」 ただ戦うのみならず...

【特別リポート】軟式JKの情熱が企業をその気に。~FF社にて新商品プレゼン~

【特別リポート】軟式JKの情熱が企業をその...

2023.03.14

 2019年に全国準優勝、「オンライン甲子園」で受賞歴もある中京大中京高(愛知)の女子軟式野球部の2人が3月2日、千葉・柏市のフィールドフォース本社(FF社)で新商品「更衣テント(仮)」のプレゼンテーションを行った。FF社の担当とは1年ほど前から打ち合わせを重ね、サンプルも完成した上での商品提案会。その内容と行方は、いかに。そもそも、野球部員の彼女たちはなぜ、このような取り組みをしているのだろうか――。   ■中京大学附属中京高等学校 女子軟式野球部 【創部】2015年(学校創立1923年、共学化85年) 【実績】2016年全国大会初出場、17年同3位、19年同準優勝/オンライン甲子園2021年夏・全国優勝、22年夏・希望大賞 【監督】土井和也(男子硬式野球部顧問兼) 【2022年度の部員】3年(卒業)7人/2年2人/1年10人 【プレゼン登壇】佐藤茜(3年)、長江莉佳(同)   前日に中京大中京高を卒業したばかりの長江莉佳さん(左)と佐藤茜さん(右)    高校野球の聖地「甲子園」で、女子の全国大会決勝が開催されるようになったのは2021年のこと。だが、同じ年にそういう晴舞台もなく、競技を終えた女子高生もいたことをご存知だろうか。 「軟式」の女子野球部員として活動する高校生たちだ。国内にほんの数校とはいえ、無念は察するに余りある。中京大中京高はその数校の中の1校だった。 「中京大中京」と言えば、男子の硬式野球部は春夏で60回も甲子園に出場しており、春4回、夏7回の全国制覇を誇る名門中の名門として知られる。一方、女子軟式野球部は創部8年目。かつて、男子の軟式野球部でプレーしていた女子選手から「女子部創設」の要望が高まり、顧問の土井和也先生(現監督)を巻き込んで2015年、女子軟式野球部が誕生した。しかし、それは同時に、苦難の始まりであったのかもしれない。 レアな部活動ゆえに  ほとんど前例のない高校の女子軟式野球部ゆえ、甲子園のような大会や予選はおろか、練習試合すら思うように組めぬ状況。全日本女子軟式野球選手権大会に「中高生の部」ができて2016年に初出場、19年には準優勝を遂げたが「高校生だから勝って当たり前」との声も聞かれたという。また、コロナ禍の緊急事態宣言が明けた2021年には硬式の全国大会が男女とも再開されたが、女子軟式の全国大会は2年連続の中止で地区大会(東海大会は8チーム)まで、という憂き目に。  それらがまた、野球ファンが多い日本でもほとんど知られていないという哀し過ぎる現実。部員たちはしかし、歪んだり投げ出したりせずに「女子野球の発展」を一大テーマに掲げて世に訴えるようになった。その最たる活動が、ZOOMで開催されている高校野球プレゼンテーション大会(通称「オンライン甲子園」)への出場、そして今回につながる産学連携の商品開発である。 FF社の会長、社長、企画開発室のメンバーらを前にプレゼンが始まった    3月1日、愛知・名古屋市にある学校の体育館で卒業式を済ませたその夜、佐藤茜さんと長江莉佳さんは長距離バスに乗り込み、明くる日に千葉県の柏市へやってきた。また正午過ぎには、新幹線に乗ってきた土井先生もFF社に到着。そして午後1時、同社3階の企画開発フロアで、モニターをPCで操作しながらのプレゼンが始まった。目の前のテーブル席には同社の大貫高志会長、吉村尚記社長のほか、企画開発室のメンバーら。土井先生は全体を遠巻きに見守っている。 悲哀すらも知られず  佐藤さんと長江さんは冒頭、前述したような高校女子軟式野球の窮状や自分たちが経験した悲哀を訴えた。 「私たちは高校生になって初めて女子野球で活動してみて、チームと大会の少なさに驚きました。そして知名度の低さとメディア露出の少なさに、すごく苦しめられた2年半でした…」  2人の1学年上の先輩たちは2021年の東海大会で優勝も、全国舞台(コロナ禍で中止)を踏めずに引退。だが、オンライン甲子園で「女子野球に注いだ情熱と発展への思い」を訴えて優勝した。そして昨年、佐藤さん長江さんら3年生は東海大会4位で全国出場はならずも、女子野球発展を期しての商品開発に乗り出すことをオンライン甲子園(希望大賞)で宣言した。  これに手を差し伸べたのが、FF社の企画開発部・小林夏希課長だ。中高はむろん、短大、クラブチームまで硬式でプレーした筋金入りの野球女子で、現在も公私にわたって女子野球の現場へ足を運ぶ。...

【決勝戦リポート/ジュニアスマイルカップ】新4年生も未就学児もあっぱれ!カバラV

【決勝戦リポート/ジュニアスマイルカップ】...

2023.03.10

 新4年生以下29チーム参加による東京・足立区の第22回ジュニアスマイルカップは3月5日、千住新橋野球場で決勝を行い閉幕。この2023年に低学年の新指揮官に就いた斎藤圭佑監督率いるカバラホークスが、3回コールドで優勝した。実戦機会をより多く!との主旨で始まったこの大会は、体験生や未就学児(新1年生)も参加できるのが特長で、準優勝のレッドファイヤーズにはスタメンで堂々とプレーする未就学児の姿もあった。 ■決勝 カバラ 640=10 レッド 000=0 【カ】小澤-野崎 【茎】古谷、安里-安里、古谷   バットでは3打数2安打、マスクを被れば好リードにご覧のストッピング。カバラの四番・捕手、野崎は末恐ろしい新4年生だ    決勝まで勝ち進んだ両軍は、地域リーグでもしのぎを削る間柄。カバラホークスは夏の全日本学童にも2度出場している強豪で、打のチームとして認知されている。対するレッドファイヤーズは、都の学童新人戦や23区大会を制した実績もあり、首都圏では知られた存在だ。互いに手の内も知り尽くしているが、この新4年生の世代となってからは初めての対峙だった。   1回表にカバラは三番・山田の先制打(写真上)から6点。続く2回は七番・赤坂の中越え2点二塁打(同下)などでリードを10点に    試合は開始直後から大きく動く。先攻のカバラが、一番・金山海洋の四球と二盗、続く石井心結主将の内野安打と二盗で無死二、三塁とすると、山田慶太と野崎太幹が連続タイムリー。バッテリーミスも重なって3点を失ったレッドは、三塁ゴロでようやく1アウトを奪って落ち着くかに見えたが、火がついたカバラ打線は下位に回っても止まらなかった。赤坂聡大と田中新の右前打に振り逃げや敵失も絡むなどして、1回表を終わってみれば打者11人で6点を先取していた。    機先を制したカバラは、先発右腕の小澤蒼大が絶好調。ストライク先行で最初のアウトを空振り三振で奪うと、与四球から二死三塁のピンチを招くが、レッドの四番を捕邪飛に打ち取る。2回表も、カバラが赤坂の中越え2点二塁打など4得点でスコアは10対0に。  3回を投げ切ったカバラの先発・小澤は、打者20人と対して被安打1、与四球3で無失点。「みんなが声で盛り上げてくれたのでどんどんストライクが入りました。良いピッチングだったと思います」   「基本は野球を楽しむことで、引かずにトライしたのであればミスしてもOK」というのが、レッドの低学年を率いる茅野修史監督の方針。2回裏、最初に打席に向かう五番・金沢瑛太にはこう声を掛けた。 「三振したって、いいんだからな!」  すると金沢は、左打席から右へクリーンヒット。さらに敵失で三塁まで進んだ。結局、本塁は踏めず、この一打がチーム唯一の安打となったが、野球歴1年という新4年生の金沢には特別な日になったようだ。「ちょっと最初は緊張したけど、絶対に当てるぞ!と思って振ったらパーンとボールが飛んでいくのが見えて、メチャクチャうれしかった。公式戦でヒットを打ったのは初めてです」。 レッドは2回裏、先頭の五番・金沢が右前へクリーンヒット。自身初の公式戦安打に、ベンチも盛り上がった    3回表はマウンドに立ったレッドの2番手・安里那月(新3年)が、手本のようなきれいなフォームから速球を投げ込む。そして一番から始まるカバラ打線を無安打の0点に封じてみせた。これで流れが変われば、レッドには準々決勝のように逆転勝利の芽も生まれたのかもしれない。しかし、カバラの先発・小澤の制球とバックの守りはどこまでも安定していた。   「細かいことの中でも守備のカバーリングは徹底して教えています。高学年になっても、その先もずっとやることなので今のうちから当たり前にできるように」...